当社では、国産大豆を使用した「信濃路」「十四割」「蔵人の技」「一流好み」などの商品を造っています。「信濃路」は、同名の商品が昭和の頃より販売されていました。しかし、当時は原料へのこだわり度合も低く、原料の大豆は、国産大豆でしたが、特に産地や品種を指定することもなく使用していました。製造方法にはこだわりが強く、職人が日夜問わずに糀造りなどの作業を行う、いわば職人のこだわりがとても強い商品ではありました。 しかし、「信濃路」を名実ともに神州一味噌を代表とする味噌として育て上げるためには、「ある足りない要素」があると気付いていました。いずれ数年後に創業百年を迎える当社にとって、どうしても逃げることのできない、絶対に避けては通れない道が、「原料の見直し」でした。
長野県諏訪市発祥の当社は、名実ともに「信濃路」の名を語るためには、願わくば信州の地で、最高の大豆を確保したいという気持ちを持ちました。しかし、現実は想像以上に厳しいものでした。様々な人脈を頼りに方々を調べ尋ねましたが、当時から、長野県内では蕎麦や高原野菜の生産者が圧倒的に多く、大豆を信州から安定的に確保するのは、その量と質のどちらを取っても事実上困難だということがわかってきました。担当の職人は、「それは絶望的な状況でした」と当時を振り返ります。
上田市塩田町の4人組との出会い
信州からの調達は無理だとしても、なんとか国産の高品質な大豆はないかと探し始めました。しかし当時は不運なことに、国産大豆の供給がひっ迫した時期と重なり、国産大豆においては「それなりの品質」のものを確保するだけでも熾烈を極める状況になっていました。信州どころか、国産大豆の確保にさえ見通しがつかない状態に追い込まれていきました。ところが、そのような出口のなかった状況の中、なんと!信州上田の「ある農家の後継者グループ」がこだわりの大豆を大規模に作ってくれるというのです!!
この後継者グループの4人は、現在は上田市、元々は塩田町の「しおだ米プロ生産者会」の後継者部を母体に結成していました。ちょうど彼らも時を同じくして、米に偏った農業ではなく、米以外の商品を開発・ブランド化したいという想いがあり、その時に偶然(必然?)にも上田出身の当社工場長が出会ったのでした。
元々この塩田の地は大豆栽培に適しており、現に、大豆の栽培がとても盛んだった時期がありました。つまり、大豆は影を潜めていただけで、塩田の地は大豆作りに適した地であり、塩田には大豆生産のプロフェッショナルがたくさんいたのです。現に、この後継者グループの4人のうちの1人であります塩澤好太郎さんのお父さんは、以前大豆で農林水産大臣賞を受賞したことがあり、まさに大豆のことは何でも知っていると言わんばかりの人でした。しかし、好太郎さん曰く「意外にも米のノウハウ以外は、親世代からちゃんと教わるということがなかった」そうです。塩田の地が、大豆栽培において、名実ともに隠れた名地であることを知った4人は、覚悟を決めて本格的に大豆栽培に突き進みます。そして、この4人の覚悟と夢は、悩み続けていた当社に、大きな夢を提供します。「契約栽培大豆農場」の誕生です。
糀の割合で2つの商品を開発
研究していく中で、2つの商品を開発することになります。2つの商品とも、契約栽培の長野県産ナカセンナリ大豆と長野県産コシヒカリ米、天日塩を原材料に使用した吟醸仕立ての無添加生味噌ですが、糀(こうじ)の割合を変えます。「信濃路」の麹歩合は9割(原料大豆:原料米=10:9)とし、深い旨みと仄かな甘みを兼ね備えた味噌感の強い伝統的な信州赤色系米糀味噌にしました。もう一つの商品は、麹歩合を14割(原料大豆:原料米=10:14)とし、米麹の甘みと信州味噌特有の爽やかな風味を兼ね備えた吟醸信州淡色系米糀味噌に仕上げ、これを「十四割」と名付けました。
2つの商品とも、より自然に近い発酵熟成方法をとっており、一言で述べると「信濃路」は滋味豊かな味わい、「十四割」はすっきりとした味わいに仕上がっています。
「信濃路」「十四割」の「無添加」仕様である「無添加 信濃路」と「無添加 十四割」は、みその表示に関する公正競争規約にて定められている「無添加味噌」の定義ルールを厳しく守った無添加味噌です。規定では、「無添加味噌」とは、原材料に大豆、穀類、食塩、種麹菌及び発酵菌以外は使用できないと規定され、一切の加工助剤もキャリーオーバーも認められていません。しかしながら、ここでいう「食塩」の種類には特に言及はなく、「並塩」でも「赤穂の天塩」や「岩塩」でも「食塩」として記載できるものは使用可能です。当社では、特にこだわりの高い「無添加味噌」の商品に使用する食塩の選択に当たり、それぞれの食塩の製造工程を確認いたしました。
その結果、一般的な食塩(並塩等)の製造工程にはPH調整剤等の加工助剤が使用されており、最終製品には残留しないものの、より自然に近い味噌を基本としている商品への使用には適さないのではないかと考えました。一方、「岩塩」などは重金属等が混入する恐れがあり安全安心の観点より使用は差し控えようと判断しました。そのような経緯の中で現在の「天日塩」を選択させていただきましたが、当社で使用している「天日塩」の原産地はメキシコの「ゲレロネグロ塩田(一部世界遺産の鯨の生息地)」です。原材料は、海水を太陽と風だけの力で2年間の歳月をかけて天日結晶化させたものの表面の約4割を飽和食塩水で洗い流した残りの6割の天日結晶塩です。その原料を細かく粉砕したものを「無添加 信濃路」と「無添加 十四割」では使用しています。
この天日塩の特徴は、原材料が結晶ですので、塩化ナトリウムの含量が高く、にがり成分を殆ど含んでいないことです(にがりは体に悪いと考える一部の人もいます)。また、単一塩田の結晶塩が原材料ですので、トレーサビリティーが可能です。使用する運びとなった塩へのこだわりも手に取る皆様に感じ取っていただければ幸いです。
信州諏訪の地に1世紀を刻んだ神州一味噌によって作り出された「無添加 信濃路」「無添加 十四割」。 【天の恵み「気候」「空気」「水」】【地の恵み「原料(大豆)(米)」】【人の思い「原料生産者の思い」「蔵人の思い」「使用してくださる方の思い」】が惜しみなく詰まった本物の味噌。
きっと、皆さまの「手前味噌」になるはずです。
十数年前、国産のしじみの即席みそ汁を作ろうと日本中を歩きました。本島の北の端、津軽半島に答えがありました。日本海に面した十三湖という汽水湖には、「おいしい!!」しじみがありました。周りには、近代設備(ごみ焼却炉や排水を出す工場)と言うものはなく、白神山系から流れてくる淡水に、日本海の塩水がまざるしじみの生育にとって理想的な環境の場所です。ここで、しじみ問屋としては日本一の「福島商店」と出会いました。福島商店と一緒に国産のしじみのみそ汁を作ろう!と言うことで、レトルト工場を立ち上げていただき、日本で初めて即席で「国産しじみのおみそ汁」を創りました。
しじみは、厄介なことがあります。砂を噛む、蝶つがいが傷むと開きにくい、しじみとうり2つの真っ黒な石が混じる、などなど根気よく1つひとつを解決していきました。
砂を噛むのは、機械で大量に採ろうとすると、しじみが驚いて噛み込んだまま機械に入りそのまま貝を閉じてしまうためです。そこで、十三湖のしじみは手掘りと言って、漁師さんが腰に鋤簾(ジョレン)という捕獲器を結わいつけて引いて採る方法です。こうするとしじみに衝撃が少なく驚かなせないように採ることができます。そして福島商店独特の砂抜き(秘密です)を施し、砂噛みの比率は極端に減りました。また手堀りの方法ですと蝶つがいが傷みません。レトルト時の圧着が強いとこれまた開きにくくなります。レトルトの圧着の調整とともに、お湯を注いでもしじみが開かないということも大幅に減りました。
また、実は生のしじみよりもレトルトにしたしじみの方が、エキスもたっぷり出て、味が濃いのです。レトルトにする前にしじみを冷凍します。この冷凍をゆっくりかけることで、しじみの防衛としてオルニチンとアラニンを大量に発生させます。このオルニチンとアラニンがしじみの旨みを倍増させる要因のひとつで、さらにレトルト(121℃ 4分以上)することでご自宅では出せないようなエキスが身から滲み出るのです。
しじみ需要の成長で、今では青森産だけの供給量だけではまかなえませんので、国産と表示しています。やはり大和しじみがもっとも美味しいと思います。
今でこそ「しじみを冷凍させることでオルニチンが増える」ことは一般に知られてきましたが、その事実を発見したのが福島商店と青森県の共同研究の成果なのです。「しじみを冷凍することによりオルニチンが増える」また、その研究過程で「マイナス4℃で緩慢冷凍によりオルニチンが最大8倍まで増える」ことを発見しました。
さらに、福島商店と青森県では東京工業大学の協力のもと、
「しじみに含まれる新規トリペプチド「アコルビン」が、肝臓を保護する」
という事実も発見。しじみがお酒飲みの強い味方だという明確な根拠に
なり得るかもしれません。