みその基礎知識

みそとは

  • 次に掲げるものであって、半固体状のものをいう。

    1 大豆若しくは大豆及び米、麦等の穀類を蒸煮したものに、米、麦等の穀類を蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの若しくはこれに米、麦等の穀類を蒸煮したものを加えたものに食塩を混合し、これを発酵させ、及び熟成させたもの

    2 1に砂糖類(砂糖、糖みつ及び糖類をいう。)、風味原料(かつおぶし、煮干、魚類、こんぶ等の粉末又は抽出濃縮物、魚醤油、たん白加水分解物、酵母エキスその他これらに類する食品をいう。以下同じ。)等を加えたもの

    平成23年10月31日 消費者庁告示第11号

    みそには、使用する原料の種類、割合や処理条件、発酵・熟成条件によって、多種多様な種類があります。
    2013年ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」に欠かせない、伝統的な日本の調味料であるみそは、私たちの健康で豊かな毎日の食生活を支えています。この大きな使命を果たすため、当社のみそ造りは、より多くのお客さまに喜んでいただけるよう日々伝統を受け継ぎながら、革新を追求しています。

みその分類と原料


  • みそ
    定義 大豆を蒸煮し、米を蒸煮して麹菌を培養したものに、食塩を混合させ、これを発酵・熟成させた半固体状のもの。
    原料 大豆、米、塩、麹菌

    みそ
    定義 大豆を蒸煮し、大麦またははだか麦を蒸煮して麹菌を培養したものに、食塩を混合させ、これを発酵・熟成させた半固体状のもの。
    原料 大豆、大麦(またははだか麦)、塩、麹菌

    みそ
    定義 大豆をを蒸煮して麹菌を培養したものに、食塩を混合させ、これを発酵・熟成させた半固体状のもの。
    原料 大豆、塩、麹菌
    調合
    みそ
    定義 上記の味噌を混合したもの、または上記の糀を混合したもの等上記のみそ以外のみそをいう
    原料 大豆、米、麦、塩、乳酸菌、他使用原料

みその分類と産地

  • 原料による分類 味や色による分類 産地 備考
    米みそ 甘みそ 近畿各府県と
    岡山、広島、山口、香川
    ・使用する糀や味、色調で大別すると左記の分け方になりますが、各地方ではそれぞれ強い特徴を出しています。

    ・たとえば、糀に使った米粒がみえる糀みそというものもあります。
    東京
    甘口みそ 淡色 静岡、九州地方
    徳島、その他
    辛口みそ 淡色 関東甲信越、北陸
    その他全国的に分布
    関東甲信越、東北、北海道、
    その他ほぼ全国各地
    麦みそ 甘口みそ 九州、四国、中国地方
    辛口みそ 九州、四国、中国、関東地方
    豆みそ 中京地方(愛知、三重、岐阜)

みその製法

麹について

  • 麹とは、米(または麦または大豆)に、麹菌(アスペルギルス菌属)が繁殖したものです。米糀は植菌後、通常48時間で糀となります。菌はオリーゼ菌(Aspergillus oryzae)が多いですが、ソーヤ菌(Aspergillus sojoe)、タマリ菌(Aspergillus tamarii)などもあります。

    麹菌は、古来から日本の醸造やさまざまな食品に用いられ、豊かな食文化に貢献してきたとして、2006年日本醸造学会で国の菌(国菌)に認定されています。当社では、この日本を代表する微生物を用い、長年培った経験と技術を継承し日々微生物との会話をしながら丁寧な麹造りにまい進して行きます。

糀の歴史

  • 360-500年頃

    応神天皇時代(369-404)に、中国から酢の作り方が伝承されましたが、米酢は米糀から作られていました。

  • 715年頃

    奈良時代初期(715年前後)に編纂された播磨国風土記に、「神社にそなえた米にカビがはえ、それで酒を醸した」とあります。 縄文時代晩期から弥生時代にかけて口で噛んで作られた「口噛み酒」が、糀カビを応用した酒造りに変わった記録で、 日本の発酵技術の黎明です。

    当時の古文書には、米飯にカビがはえたものを、「加無太刀」「加牟多知」(かむたち)といい、 「口噛み酒」の噛むの語源を残しながら、「カビ立ち」の意味を持たせ、「カムタチ」→「カムチ」→「カウチ」→「コウジ」となったとされています。これは糀の歴史を語る変化です。

    口噛み酒とは

    長野県富士見町の井戸尻遺跡から縄文中期に作られた飲酒器らしい土器が発掘されています。 古代においては、米などの穀類を口で噛んで容器にため、酒を造っていました。この容器内では、唾液の消化酵素が穀物を分解し糖を作り、これに空気中の酵母が落下しアルコール発酵を行い酒となりました。 これを「口噛み酒」といいます。

  • 延喜式 (編纂905-927) 平安時代の 政治規範

    平安時代の政治規範である延喜式には、御酒(ごしゅ)、御井酒(ごいしゅ)、醴酒(あまざけ)、擣糟酒(すりかすざけ)などなど、多種の酒が造られていた記述があり、本格的に酒が造られていました。酢を一石作る原料として、米糀を四斗一升使用するという米酢の製法も日本で最初に記述されており、 糀が盛んに食品原料として利用されていたことが分かります。

  • 平安時代

    種麹が出現しました。当時は、友麹、友種と呼ばれ作った麹の一部を残して、次に使っていました。

みその起源

醤はみその起源

  • BC1100-BC256

    中国周の時代 禮記に、珍用八物、醤用百二十甕(8種類の料理を作るには、120甕の醤が必要)とあり、すでに醤というものがありました。醤とは、動物の肉と麹、塩を酒に浸し100日で作り上げた肉醤。麹を使った調味料が存在していました。

  • BC551-BC479

    孔子の論語「郷党第十」に、不得其醤不食(適当な味付け汁がないと食べない)と記述されており、醤が最古の調味料であることが文書として残っております。この時代はまだ、獣、鳥、魚を原料とした、肉醤、魚醤でありました。

  • BC200-BC100

    前漢時代の穀醤が中国湖南省より出土し、後漢時代の「論衡」に豆醤の記述があり、この頃には大豆を原料とした醤が製造されていたことが分かります。これがまさに味噌、醤油の原点と考えられます。

  • 386-634年

    北魏の斎民要術(世界最古の農業技術書)に、大豆と糀を混ぜて醤・鼓を作る方法が書かれております。

日本において

  • 360-500年

    360年ごろには米酢が米糀から作られ、500年ごろには醤油の原点となる「比之保(ヒシオ)」が作られていました。比之保(ヒシオ)とは、903年に作られた日本最古の辞書(和名抄)にある「醤」の和名です。雑穀から糀を作り塩で漬け込んだ「穀ヒシオ」、魚介類を原料に「魚ヒシオ」、野鳥肉、鹿肉を原料に「肉ヒシオ」を作り上げていましたが、中国においての「魚醤」、「肉醤」と共通する点から、斎民要術と時代が一致するのも偶然ではないと思います。

    引用;小泉武夫著「発酵」15版 中公新書2015

醤から未醤へ

  • 701年

    大宝律令に醤院(ひしおつかさ・天皇の食事を作るところ)で、醤、鼓、未醤、酢、酒、塩などを調味料として使用していた記録があり、「醤」が日本で存在している日本最古の記録です。この「未醤」がみその語源と言われています。

  • 730年

    正倉院大日本古文書にある尾張国正税帳に、税金として醤、未醤が徴収されていた記録があります。この頃には日本の民間人が、醤、未醤を作っていたという事実です。

未醤から味噌へ

  • 901年

    日本三代実録(天皇三代にわたる歴史書)に、初めて味噌という文字が出てきます。701年の「末醤」が、ついに「味噌」になったという記録です。

  • 905-927年

    平安時代の政治規範である延喜式(編纂905-927)には、未醤、未曾、味醤、醤、醤滓、滓醤、鼓、鹿醤、鹿未醤が、月給として支払われていた記録があります。

武士のたんぱく源・塩源

戦国時代

武田信玄(山梨県、長野県):信州みそ

  • 武田軍が上杉謙信との戦いのため、その道中にみその増産を奨励、信州にみそ造りが広がる結果となりました。
    ゆでた大豆をすりつぶし、糀と混ぜて丸め、藁(わら)に包んで戦場に持参した「陣立てみそ」は有名です。みそ漬けした茎(いも茎、芋がら、ずいき)を乾燥し、腰紐(芋がら縄)として持参したことが知られており、陣笠でお湯につけみそ汁を作ったのでしょう。
    信州みそ発展の原点であり、即席みその原点でもあります。

伊達政宗(宮城県):仙台みそ

  • 城下に塩味蔵という日本で初めての味噌工場を作りました。

徳川家康(愛知県):八丁みそ

  • 麦飯とみそ汁(五菜三根のみそ汁)を好んで食べており、長生きの秘訣であったかもしれません。

前田利家(石川県):加賀みそ、能登みそ

  • 利家の居城、金沢城では、戦時に備え貯蔵品としてみそを作らせました。 味噌蔵町という地名もできるくらい盛んだったようです。

みそと言伝え

  • 味噌は、江戸時代の医学でもすばらしい食材として重要視されています。元禄8年(1695年)に著された『本朝食鑑』という本があります。
    これは庶民の日常食品について医学的な見地からよし悪しを解説した本です。 「腹中をくつろげ、血を活かし、百薬の毒を排出する。胃に入って、消化を助け、元気を運び、血の巡りを良くする。痛みを鎮めて、よく食欲をひきだしてくれる。嘔吐をおさえ、腹下しを止める。また髪を黒くし、皮膚を潤す」
    味噌は体を温め、気分や心をゆったりとさせて血行をよくし、酒毒を解消するといった大豆の機能に加え、便通をよくし、元気を出し、血をつくり、血のめぐりをよくする力もある、と解説されています。

    また、塩分と相まって悪血をおさめ、体を丈夫にし、体毒を消し、血圧を低くし、体をつやつやさせ、痛みを止め、吹き出物などが出るのを防ぎ、食欲をそそらせるといった効果もあるとされています。 味噌の力には、昔の医学の専門家も注目していたのです。

    広島大学名誉教授 渡邊敦光先生著書 『味噌力』(かんき出版) からご紹介

ことわざ

  • ・みそ汁一杯三里の力

    ・みそ汁は朝の毒消し

    ・みそ汁は医者殺し

    ・みそ汁は不老長寿の薬

    ・みそ汁はたばこのずをおろす(ず=毒、害)

    ・味噌で飲む一杯、酒に毒はなし

  • 昔から「タバコ好きにはみそ汁」などと言い伝えられてきました。
    江戸時代、ヤニでつまったキセルの掃除にみそ汁が役立ったことからこのような言い伝えができたのでしょう。
    ヤニでつまったキセルに煮立ったみそ汁を流し込むときれいにヤニがとれますが、お湯や水ではきれいになりません。
    またみそ汁に含まれるビタミンB群にはタバコの有害分を取り除いてのどを守る作用があると考えられています。

    こんなことから「味噌は医者要らず」といわれたのでしょう。庶民が暮らしの中で感覚的にとらえてきたことを、現代の科学が一つずつ解き明かし、先人の知恵と味噌の効能のすばらしさが知らされつつあります。

    また、味噌には味の素、命の素、美の素が含まれているという意味の「味噌の三礎」ということわざもあり、こんなにすごい効用のある食品は、他にはみあたりません。

    みそ健康づくり委員会「みそを知る」第3版2011年