日本人と茄子

  • 日本の食生活に欠かせない茄子。初夢にみると縁起が良いものとして「一富士二鷹三茄子」と茄子が挙げられています。これには諸説ありますが、富士は「無事」、鷹は「高い」、茄子は「~を成す」に通じ、縁起が良いと徳川家康が好んだという説があります。

    茄子は奈良時代にはすでに食用とされ、平安時代の宮中作法が書かれている「延喜式(えんぎしき)」には茄子の味噌漬けや粕漬けが記されています。
    茄子は90%が水分で日持ちがしないので古くから漬物にして保存されてきたのです。

    それから茄子にまつわることわざとして、「秋茄子は嫁に食わすな」があります。
    茄子は食べ過ぎるとカリウムの利尿作用により体温が下がり、体の冷えが婦人病を起こしやすくなるため、姑が嫁の身体を気遣い生まれた言葉なのだと思います。
    そのため茄子を料理するときは温性(発汗・保温作用)の野菜である葱、生姜、唐辛子などを組み合わせると、茄子の欠点を補いながらおいしく頂く事ができます。
    またポリフェノールという、ほとんどの植物に存在する苦味や色素成分がありますが、これは抗酸化力が大変強く、動脈硬化などの生活習慣予防に役立ちます。その一種であるアントシアニンは茄子の皮に含まれ、紫外線による酸化を防いでくれますので、旬である6月~9月に大いに摂取してください。

    茄子は油との相性が良いので、てんぷら、ピーマンとのしぎ焼き(甘辛みそ炒め)、焼き浸しなどもお勧めです。今の時期のお勧めの味噌汁は、茄子を皮付きのまま輪切りにして豆腐と一緒にごま油で炒めて赤みそ仕立てにします。
    仕上げに粉山椒をふりますと保温作用もあり、風味も増してより一層おいしく頂けます。

    京野菜ブランドの賀茂ナス、高知の米ナス、三重の白ナス、大阪固有の生でも食べられる泉州水ナス、熊本の焼き茄子にすると美味な熊本赤ナス・大長ナス、漬物に最適な秋田の小ナスなど、近年相次いで地方品種が復活しています。
    この夏はぜひ、様々な品種の茄子をお楽しみください。