味噌汁をさらにおいしく作ろう-

  • まもなくお月見の時期となりますね。秋は実りの時期。おいしい果物、野菜などが店頭に並び始めます。お月見には月見団子やおはぎをお供えしますが、汁物は秋の食材をふんだんに用いたけんちん汁(味噌仕立て・しょうゆ仕立てとあります)を用意します。けんちん汁は老若男女を問わず好まれますが、なぜおいしいと思うのでしょうか。

    食べ物にはおいしさを感じられるpHがあり、食材の持つ酸性・アルカリ性の性質を知ることで、料理をおいしく作ることができます。
    pH4~6がおいしい範囲ですが、特に弱酸性であるpH5.5~6.0が一番おいしいとされています。

    7以上のアルカリ性だと味がボケやすく、3以下の酸性が強いと酸っぱいと感じます。食材のpHを見ていきますと、熟成味噌・しょうゆはpH5位、野菜類はpH6~7、海藻・こんにゃくはアルカリ性の強い食材です。
    ほうれん草のお浸しは、茹でたほうれん草にだししょうゆをかけることで、弱酸性に近づき、おいしいと感じます。

    サバの味噌煮や里芋の煮ころがしも同じ原理でおいしいと感じます。
    よってけんちん汁は、たくさんの旬の野菜と味噌、こんにゃく、かつお昆布だしでうまく調和がとれていて、弱酸性に近づき、“とてもおいしい”と感じるのです。味噌は、仕込時はpH5.7~6.0ですが、熟成度が増すと、pH5程にも下がります。これは麹菌や乳酸菌でたんぱく質などが分解され、旨味・甘味・酸味・芳醇な香りが生成すると共に、酸味が増すためです。
    酸性に近づくと食材の保存性も高まり、おいしさを感じるpHになるのです。 もうひとつ忘れてはならないことは、昔の食のことわざで、“味噌汁は煮えばながいちばんおいしい”ということです。
    だしで野菜を煮て、味噌を溶き入れ、煮立った頃が一番おいしい。
    再沸騰させたものはまずくなる。
    と言い伝わっています。これは、だしの中に、味噌の粒子が小さく均一になっているのが一番おいしく、何度も煮返すと味噌の粒子が大きくなり、旨味、香りを吸い込んでしまいまずくなってしまうのです。

    日本人として、ご飯・味噌汁のことをよく知り、おいしく作るきっかけになればと思います。