野山の香りを楽しむ

  • 若葉に風薫る頃になりました。桜の季節が過ぎ去ろうとするとき、木々の若葉が次々と生まれてくるときを古代の人々は見つめてきました。
    例えば桜の花や葉を塩漬けすることで独特の香りが生まれ、和菓子や料理に利用しました。
    また、柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「家系が絶えない」、「子孫繁栄」と結びつき、縁起の良い食べ物として、柏餅が定着しました。さらに朴(ほお)の木は国内でも最大の樹木で、朴の葉を儀式や写経、食べ物を包んだりお酒を飲むときの器として利用されてきました。

  • 落ち葉の朴の葉は比較的熱に強いため、味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌・朴葉焼きといった郷土料理の材料としても利用されています。
    また、山椒の芽や笹の葉のなどを含むこれらの葉は、独特の香りや抗菌・殺菌作用があるため里山の若葉を生活に役立てました。

    日本人として新芽の代表格はやはり緑茶でしょう。
    新茶の時期は、4月頃から九州に始まり、関東地域は5月上旬から中旬が茶摘みの時期になります。初めて摘んだ茶葉を一番摘みといい、香りがよく渋みが少ないのが特徴です。

  • 緑茶に含まれるアミノ酸の一種であるテアニンには甘味があり、リラックスを促す神経である副交感神経を優位にする働きがあります。
    また飲み終わった茶殻は水に溶けない成分(ビタミンA・E・たんぱく質など)が残っているため無駄なく料理に利用することもできます。
    乾煎りしてふりかけやお菓子作りに、てんぷらの衣に混ぜてもよいでしょう。
    昔は半乾き状態で畳にまいてほうきではくと、チリ・ホコリがよくとれてきれいになったものです。

    窓や蛇口を茶殻でこするときれいになりますよ。最近はお茶のペットボトルが主流ですが、ぜひ急須で煎れたてのお茶を味わっていただきたいものです。緑茶作りを支える職人たちを応援するためにもこの機会にぜひ一度お試しください。